2017年5月24日 更新

人事、テクノロジー、脳の専門家が語る「生産性」と「ハッピー」の関係【前編】 

「生産性とは?」をテーマに、楽しくて深い議論がかわされました

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「生産性について話をしましょう」――、会社でそんな風に言われたら、あなたはどんな気持ちがしますか?

「仕事の効率が悪いって注意されるのかな?」とドキッとする人もいれば、「ダラダラ仕事をしているオジサンたちを追及するチャンス!」と思う人もいるかもしれません。どちらにしても、ちょっとシビアな話し合いを予想する方が多いのではないでしょうか?

そんな、重たくて固いテーマだと思いがちな「生産性」について、実に楽しそうに語り合う人たちがいました。「Team WAA!」というコミュニティが3月に行った勉強会で、ユニリーバ・ジャパンの取締役 人事総務本部長 島田由香さん、株式会社ジンズ JINS MEME開発統括の井上一鷹さん、株式会社DAncing Einstein代表 青砥瑞人さんがそれぞれに語った「生産性の定義」をご紹介します。

 

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生産性の測定方法は「感覚値」でOK! 働く個人の幸福度に注目

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昨年7月に、社員が働く場所と時間を自由に選べる制度「WAA(Work from Anywhere & Anytimeの略。“ワー”と読む)」の導入を主導したユニリーバの島田さんは、「WAAで生産性が高まっているのかどうか?」を測定する方法をいろいろと考えた結果、 「社員本人の感覚値でいい」という結論に達したそうです。

WAA導入後は3ヶ月毎に社員にアンケートを取り、「導入前を50としたときに、今のあなたの生産性は0から100のどこですか? 数字を入れてください」という質問をしています。3月時点までの回答の平均値は65。そこから「(50に対してプラス15ポイントなので)生産性は30%向上した」と判断しているそうです。

さらに島田さんが注目しているのが、68%の人が「WAAが始まってから、毎日の生活に何かしらポジティブな変化があった」と答えていることです。

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島田さんは、自身が考える「生産性の定義」を中国の思想である陰陽の「太極図」を使って説明しました。

この図では、生産性を構成する要素のうちアウトプットが左側に、インプットが右側に配置されています。生産性の一般的な定義(生産性=アウトプット÷インプット)を知っている方は、右側のインプットの内容が特に新鮮に感じられるのではないでしょうか。一般的には、原料や労働力といったものをインプットとすることが多いのですが、この図では社員のかなりプライベートな領域も挙げられています。

島田さんは、「世の中で『生産性』について語る時、アウトプットという会社側の視点に偏り過ぎている」と語ります。アウトプットがあるのはインプットあってのこと。そのインプットを支えている社員側の視点をもっときちんと捉えなければいけないというのです。そして、中でも大事だと考えている要素として次の5つを挙げました。

マインドセット、健康や体力、モチベーション――ここにはパッションみたいなものも含まれます――、それから 幸福度、ハッピーかどうか、満たされているかどうかですね。そしてどんな気持ちで仕事をするのかという 感情です」

これらの要素がインプットになり、アウトプットに影響する。そのアウトプットがまたインプットに返っていく、そういう循環を表すのが上の図です。人事としては、右側の社員視点でのインプットの内実をもっと見ていく必要がある、と島田さん。だから、先に挙げた「WAAが始まってから、毎日の生活に何かしらポジティブな変化があった」と答える社員が多いことを重要視しているわけです。

 

生産性と集中と幸せがリンクする理由

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株式会社ジンズの井上さんは、「JINS MEME」というメガネを開発しています。かけている間ずっと瞬きと視線移動と姿勢の状態を記録しつづけ、1日の中でいつどれくらい集中していたかをスマートフォンのアプリで見ることができるというものです。

井上さんは、「生産性を定義する」というお題にかなり悩んだそうで、そもそも
なぜ「生産性が高い」必要があるのか? というところから語り始めました。

よく言われるのは、今後労働生産人口が減っていく中で、一人あたりの生産性を上げないとGDPが維持できない、ということ。でも、これだけでは個々人が生産性を上げたいと思う理由にはなりません。

「日本では特に、できるやつに仕事が降ってくるものだと言われますね。だから、生産性を上げたって仕事が増えるんだったら損しかしない、だったらやらないよ、ということになります。組織は個人に、生産性をあげたいというモチベーションを与えていないのです」

そんな中でも生産性が高いのは、 「自分がやりたいことを知っていて、そのために時間を作ろうとしている人」だと井上さん。組織の目的である「生産性」を高めるためには、個人の目的である「幸せ」も無視できないと指摘しました。

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次に井上さんは、JINS MEMEを活用した生産性の上げ方について紹介しました。

優秀なアスリート、例えば陸上選手は、練習で走る1回1回のタイムをストップウォッチで測り、毎回の精神状態やフォームを振り返り、自分がどういう状態であればパフォーマンスが高いかを把握し、本番でも実力を発揮します。しかし、オフィスで働くホワイトワーカーは、自分のパフォーマンスの出し方について振り返ってみるということを、通常はほとんどしません。

先に紹介したユニリーバの社員へのアンケートによると、「どんなときに生産性が高い、成果が上がっていると感じられるか?」という質問に対し、8割の人が「集中できているとき」、「集中できる環境にいるとき」といった回答をしており、生産性と集中には密接な関係があることがうかがえます。JINS MEMEを使えば、 自分の集中力の発揮具合をチェックし、自分のパフォーマンスの出し方について振り返ることができるというわけです。

井上さんは、上手に集中できるようになると、組織の生産性が上がるだけでなく、個人にとってのメリットもあると言います。

「チクセントミハイという先生が、フローという超集中状態を定義しています。それまで幸せというのは、意義があることをしているときか、快楽を得ている時に感じられるものだと考えられていたのですが、フローは幸せの3番目の状態らしいんです。人間は、その行為の内容がなんであれ、超没頭すると勝手に幸せな気持ちになる、ということなんですね。つまり、 生産性を上げたいということと、幸せでありたいということ、この2つは、個々人が集中しやすい環境や状況を作ってあげることができれば、両立するんです」

JINS MEMEで集中状態を可視化してみると、同じ会社、同じ部署で働いていても、集中力が高まる時間帯や場所は人それぞれであることが分かるそうです。井上さん自身も、それをきっかけに「どこで働くべきか、いつ働くべきか」を考えるようになりました。そして、個人には 自分の状態を内省し、より効率的な働き方を追求する姿勢、組織には 様々な働き方を選択できる自由を認めることが必要で、 その2つが揃った時に、初めて生産性が上がるという考えにいたったといいます。

後編では、脳の専門家である青砥さんによる生産性の定義、会場に集まった参加者たちのグループワークについて紹介します。)

ユニリーバのWAAについては、こちらをご覧ください。
ユニリーバ「WAA」で変わった社員の働き方、その成功のカギとは?

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